ラベンダーさんの育て方

植物擬人化小説

ラベンダーさんと制服の草Ⅰ アトランティスへの不満 あとがき

どんなファンタジーの敵よりも、恐ろしく残虐なのは、
この世界に無限にはびこっている存在たちです。
彼らは決して魔王みたいには振る舞いません。自分を敵だと認識させないのです。
ですので、立ち向かう勇者もあまりいないのです。

作者

 

原子力発電所

 


私は愚かだった。バカだった。グズでした。最低の人間でした。
23歳で気づけたからまだ良かったものの、本当は、もっと早くに、自分の国がどういう国であるのかに、気づくべきでした。
 今まで音楽のこと以外、何も、なんにも、見えていませんでした――
「重いからチェンジ!」
「あ、ちょっと! まだ俺が――」
 
 えー、マイクの高さが合わないわ。よし、これでOK!
 オッス! 日本のみなさん、こんにちは。植物界の大スター、ラベンダーよ。
 え? 何? ラベンダーなんて奴は知らない? ……おほん、ま、日本じゃ桜とか梅とか紅葉のほうが人気みたいだから、しょうがないわね。あとで燃やしておこう。世界的には私のほうがそれはもう大人気よ。俳優で例えるとそうね、ジョニー・デップとかハリソン・フォードの1000倍は人気よ。
 え? 脇役は引っ込んでろ? ラヴァーレを出せって? ……フゥ、やれやれ。まったくこれだから人間は。ネットで検索すれば、私の正体なんて――

 ――今しばらくお待ちください――

 ランララ ランララ ラルララ ルラララ ランララ ランララ ラルララ ルラララ
 ランララ ランララ ラルララ ルラララ ランララ ランララ ルラララ ルラララ
(カノン)

 おまたせ。まあ、何があったかは訊かないで。大人はいろいろ大変なの。
 いや~、それにしても、こんな物語が生まれるなんてね。泣いちゃった子はごめんね。でも、みんながなかなか現実を見てくれないで、アニメやゲームばかり楽しんでいるから、私たちも、わざわざこうやって二次元まで苦労して来たのよ? その努力は認めてほしい。魂が歪むかと思ったわ。お偉いさんアマテラスなんてもう、全治100年の重傷よ。続編? 
出すわけないでしょ! どれだけ大変だと思ってんの。もうやんないよ。
 で、このままだとヤバイって上で話し合った結果、コンタクトを取れる作家を探したんだけど、才能あふれる優秀な人に限って……。あげくの果てには、植物の擬人化をゆるキャラみたいなストーリーで書こうという許せん輩までいる始末……。
 それでようやく見つけたのが、いっくんよ。
本なんてあんまり読まないし、ましてや小説なんて書いたこともない子だったから(そんな状態で書いたのが、この本の一章――ミントの精霊)、大変。おまけにピアニストを目指していて、音楽のこと以外何も見えないという、そこらへんによくいる典型的な若者。……さて、この子をどうやって引きずりこんだのかと言うと。

1、環境的にも精神的にも、まずはピアノが弾けなくなるぐらい追いこむ(今ドキの若者には珍しい、芯のあるガンコ者だったから、徹底的に追いこんでやったわ)。

2、音楽に恋するぐらい夢中になっていたので、それを超えるぐらい、文章を書く楽しさ
をひたすら叩きこむ(機材にお金使うこともないし、文字を書くのはラクだぞって)。

3、やっぱり音楽が恋しいと思い、ピアノに触ろうとしたので、ピアノを容赦なく
破壊する(無慈悲と思われるかもしれないけど、世界のためには犠牲もつきものよ)。
  あのままピアノを弾いていたら、危ないトコだったわ。私の努力がムダになるもの。

 という具合ね。
 苦労したのよ、ホントに。
 ニュースだってほとんど見ない子だったから、何から何まで教えるのが大変だった。
 作者のいっくんでさえ、最初はそんなもんだったんだもの。でも、この物語を作り終えたあとは、別人に生まれ変わったみたいだったわ。
 撮影期間(執筆期間)がピッタリ三ヶ月と11日だったこと。
 アドリブで文章書いてたら、いつの間にかハーデスさんが死んでいたこと。
 この本のタイトルが『ラベンダーさんと征服の草』であること。
 本人は物語を書き終わった後に、この3つのことが全部、核に関係することだったって気づいでゾッとしてたから、となりで見ていて超おもしろかった。ま、私がそうなるように仕向けたんだけど。他の部分も気づくかしら?
 いっくんはノープランで行き当たりばったりにアドリブで書いて、あとから自分が書いたことをちょこちょこ修正する手法で書いてるから(段落や句点、脱字や言い回しは修正しても、ストーリーはどこもいじってないわ)、けっこうアイディアとか落とすのがラクなのよ。
 あとから自分が書いた文章の意味を調べて、気づいて、ビックリするぐらいだもん。
 さすがね。ジャズピアニストを目指していただけのことはあるわ。
 これぐらい持ち上げとけば本人も満足でしょう。身内の自慢話はこれぐらいにしておく。
 え? アトランティスは本当に実在したのかって?
 ないに決まってるでしょ! 常識で考えなさいよ! ないない、ありえない。
 夢やロマンのままにしておきましょう。現実は、絶望しかないんだから。
 最後に、いっくんが言おうとしていたことがあるから、それを言っておしまいにするよ。
 
 私は、三次元におけるすべての物語の悪役が束になっても、到底太刀打ちできない残酷で無慈悲で非道な呪文を、読者のみなさんに放ってあげた。

「あなたはもう、事実を知ってしまった。今まで通り知らぬフリをして生きることは出来ないだろう。それはこの本を手にした瞬間から、決まっていたことだ。国と国民は一蓮托生。人類と地球も一蓮托生。他人の非道を見逃していれば、明日は我が身。例え自分が困らなくても、我が子、孫、その次の世代に、責任と問題をなすりつけるだけだ。さて、百年後のこの国が――はたまたこの星がどうなっているのか、実に楽しみだ。私はもう生きてはいないが、そこではきっと、また新しい物語が幕を開けるだろう」