ラベンダーさんの育て方

植物擬人化小説

第12輪 ナポ公の進撃

連れて行ってくれるって約束したのになぁ

 マノン・ガトフォセ

 

ナポレオンの写真

 

 血で真っ赤に染まったような服のサンタ共が三太を襲っている! 
なんてこった! マイナデスコールが充満してサンタ界は堕ちたんだから、中にいるサンタだって正気を失ってるに決まってるのに。
どうして気づかなかったんだ!
 三太は現在、サンタ――マイナスサンタとでも命名しようか――に襲われて、拳や剣を避けるのに精いっぱいだ。ぎりぎりのところでかわしてはいるが、相手は大人だ、それも十数人。子供の姿では圧倒的に不利だ、三太はまだ大人の姿に成長できるほど体力が回復していないらしい。
「マノン、おまえはここで待ってろ」
「オレンジ、これっていったい――」
「説明してるヒマはない」
 オレは急いで飛んでいくと三太の頭上でナポ公の姿になった。

(ナポ公とはもちろん、ナポレオン・ボナパルトのことだ。なつかしいな、あいつ元気にしてるかな。昔はピィピィ泣いてたひよっこだったのに、あっという間に立派になって。
 あいつにレディの扱い方を教えてやったのはこのオレだ。やつはオレ様の女性に対する心得をみるみるうちに吸収してゆき、みごと、オレンジ勲章準2級を受章した。ニワトリぐらいには成長したんじゃないか? だがやつは慢心した。最後はケンカ別れになっちまったが、根は……うーn、人間だな。
 ちなみに妻のジョセフィーヌが飼ってたフォーチュンというパグは、オレと会話できるほど霊感が強く、いけ好かないヤツだった。あいつは犬の中でもかなりの悪タレだ! もし人間だったら、その悪名は後世に語り継がれただろうに、残念だ)

 下降中に火炎玉を作ろうと手のひらにエネルギーを送りこんだが、途中で気づく。そうだった、この世界でいま火はマズい、ナポレオン・ボナパルトはタッと着地した。
 ちょうど三太に殴りかかろうとしたサンタを踏み倒し、少し背が高くなった皇帝は無心で隣の三太と目が合った。

「……」

「……何してんの?」

「おまえを助けようと思って」
「上から攻撃して蹴散らしてくれれば――」
「危ない!」ナポレオン・ボナパルトの皇帝パンチだ、喰らえ!
 三太の背後から襲いかかってきたはだかのサンタのほおに命中した皇帝パンチ。しかしオレのイメージとはむなしく、はだかのサンタはダウンせずそのままオレにつかみかかってきた。
 おぉ、こんにゃろ! 
倒されたオレはサンタの腹に足を入れ、思いっきり後ろへ蹴り飛ばした。
 急いで起き上がると、三太は大人の姿に成長していた、体力が回復したようだ。7人に囲まれてるが、ふたりは仲間割れして殴り合ってるので5人のサンタと戦っている。いまふたりを日本刀で気絶させたが、残りの3人が難しそうだ。3人のサンタが持ってるのはチェーンソー、札束、RPG―Tだ。全員ゾンビみたいに不規則に動いており、三太は苦戦していた。
 特に厄介なのがRPG―Tを持ったやつだ。RPG―Tはトト社という非物質界の有名企業が開発した対UFO携帯兵器で、肩に担げるサイズにもかかわらずUFOを撃ち落とす威力を持っている。
三太は必死でRPG―Tの軌道からはずれようと、躍起になって暴れていた。
助けに行きたいが、こっちもそれどころじゃない。
 なんせ10人ぐらいのサンタ共が次々に、このナポレオン・ボナパルトに襲いかかってくるのだ。半分ぐらいは素手だが、銃口を向けるやつ、スタンガンを持つやつ、槍を持つやつ、スマホを持つやつ、帽子をくるくる回すやつ、赤い帽子をパンツの中に入れ、犬みたいによつんばいでくるくる回ってるやつ、自分の顔を殴りまくってるやつ、いろいろいる。

(まったく、もし人間だったら不敬罪だぞ!)

 悲しいことに、オレの実力でこのサンタたちを真正面から倒すのは難しい。だが、オレは機転を利かせた。相手は酔ってる、正気じゃないならなんとかなるはずだ。
オレは自分の香りと念をこめて分身を作った。そしてオレ自身は体のエネルギーの流れを止め、がんばって気配を消した。

(呼吸を止めてるとイメージしてくれれば、どれだけ苦しいかわかるだろ? エネルギーの流れや動きを止めるということは、はだかみたいに無防備だから、いま攻撃されたらオレはヤバい)

 オレの予想どおり、サンタ共は分身を攻撃し始めた。オレとそっくりというわけではないが、等身大のオレンジ色の光はオレと同じ周波数のエネルギーだ。まともに霊視できないやつには、オレと同じに見えてるだろう。
よし、三太を助けよう!
 見ると三太は、相手のチェーンソーを日本刀で真っ二つにしたものの、後ろから襲ってきたボコボコ顔の黒服サンタに羽交い絞めにされて、もうひとりから札束でビンタされていた。
いまちょうどRPG―Tは発射準備が完了した。
マズい! そんなものヒトに撃ったらどうなると思ってるんだ! オレは携帯空間から銃を取り出してRPG―Tを持つサンタに狙いを定めた。間に合ってくれ、指に力を入れるが、耳に不穏な音が届いたせいで引き金を最後までしぼることができなかった。
 シュボっという音が気になり、後ろを振り向く。オレの視線の先では人差し指から火を出したイカれたサンタが、手に持ったダイナマイトの導火線を燃やそうとしていた。

 ――おい、やめろ!!!

 空中で待機していたマノンは、小さな火炎が森から噴出するのを見た。
 なんか火が出たなと思っていたら、火炎は瞬く間に太陽のように丸く巨大な光になり、爆風を全身に受けたマノンは吹き飛ばされてしまった。



魂が燃え上がりそうな轟音が鳴り、大爆発が森を飲みこんだ。
マノンは爆風で吹き飛ばされていた。
体が熱い! 心が痛い!
 乱れる大気の中、マノンは落ちないよう必死で翼を広げ気流に乗ろうとしたが、できなかった。風が激しすぎて無理に翼を広げれば折れてしまう。
そのまま飛ばされたマノンは背中から大木の幹に激突した。背骨から全身に激痛としびれが走り、目がかすむ。それでもなんとか枝にしがみつくことができたのは、奇跡だった。
 マノンが痛みと体にたまった熱でぐったりしている間も、遠くでは炎が大英帝国のように領土を広げていた。だが、いまのマノンにはそんなこと、どうだってよかった。
森が燃えようがオレンジや三太がどうなろうが、関係ない。興味がない。
 マノンはやる気が急速に衰えるのを感じた。
生きる気力がなくなっていくのが、自分でもよくわかった。
人間界を救うため、世界大戦のような事態を防ぐために、こうして幽体離脱してサンタ界へやって来たのに自分は役に立つどころか、足手まといになっていることが悔しかった。いまだって、オレンジと三太の戦いを空から見ていただけで、何もできないでいた。

 ラベンダーとの秘密の特訓中、ラベンダーはこう言った。

 ――あなたには才能がある

 あのときは浮かれていた。いい気になっていた。
でも、嘘だった。わたしに才能なんかない。才能ってなに?
 霊が視えたり幽体離脱ができるニンゲンは限られているけど、上の次元じゃみんなあたりまえにできる、すばらしい才能があると思ってたのに。
実際はオレンジの役に立つどころか、足をひっぱってばかり。
敵が襲ってきたとき人質に取られたら、わたしのせいでオレンジが死んでしまったら。ニンゲンだって差別されたくないよ。ヤダ! しょせんニンゲンだったってオレンジに思われたくないけど、でもあの爆発じゃあもう死んじゃったしなあ、どうやって家に帰ろうかなー。
 マイナデスコールのネガティブなエネルギーで、自分の周波数が下がっていることには気づいてるけど、なんかこのままでもいいかなって思う。
だってわたしがいなくても世界は変わんないもん。
 マノンはどんどん自分の世界へ引きこもっていった。
 森を燃やす炎が愛おしく感じ、きれいだと思った。葉っぱのついていない枯れ木ばかりの青白い森は、OBAKEが出そうで不気味だけれど、美しい。鳥のさえずりの代わりに、ガリガリとゆがんだギターみたいな叫び声が空気に含まれているサンタ界は、なんだかとっても刺激的で、うっとりする。空は赤くて、得体の知れない何かの鳴き声がして、ぞくぞくする。
胸が冷たく熱い。
ここで暮らせたら、幸せだろうなぁ。
 マノンがそう思って目をつむったとき、強い不快感を感じた。とてもクサいニオイを嗅いだからだ。虫唾が走る。おぇ、なんだこのニオイは。マノンは咳こみだした。
 気分はたしかに最悪だった。しかし、鼻にまとわりついて離れないこのしつこいニオイは、どこかで嗅いだような、ことが――あるような。
 記憶の白い海にはひとつの点があるが、小さすぎてよく見えない。
 もどかしいと思う間も、マノンはこのクサいニオイの正体がわからずイライラした。木の枝を強く叩きすぎて、手からは血が出ていた。気づけば鼻血も出ている。
うァ、どうしても思い出せない。思い出さないといけない気がするのに……。
 とうとう疲れ果て、マノンは思い出すことをあきらめた。枝の上に寝そべり遠くで燃える炎を見つめて、燃やされるってどんな感じなんだろう、あったかいし、もしかしたら気持ちいいかもしれないと思ったとき――

 ――オレンジの香りだ

 思い出した。
 なんでクサいと思ってしまったんだろう、涙が出てきた。
良い香りのはずなのに、クサいと感じた自分の心が恥ずかしい。
生きなきゃとマノンは思った。ニンゲンとして生きるなんてとっても恥ずかしいことだと心の底から思った。でもどうしてか、恥ずかしくても、蔑まれても、生きなきゃと思った。
 ラベンダーに会いたい、オレンジに会いたい、パパに会いたい。
 生きる! 生きる! 生きる! ――……。マノンはがんばって念じたが、すぐにやめた。
もう疲れた……………………メンドくさい。
 マノンは目をつむった。
息を吸えば、とっても気持ちいい空気が肺を満たしてくれる。
 オレンジがいなくても、ラベンダーがいなくても、わたしはしあわせ。
 あの炎に燃やされたら、どんなに気分がいいだろう。オレンジも炎のエネルギーは気持ちがいいって言ってたし、わたしも燃やされてみたい。
 マノンは鳥に変身した。しかし、その姿はとても鳥と言えるものではなかった。
 マノンが変身したそれは、ギリシャ神話に出てくるキマイラのように、いろいろな動物が混ざり合ったよくわからない姿だった。うなり声をあげて大木から飛び立った魔獣は、重々しい動きで飛んでいたが、体があまりにも重すぎてだんだんと降下していった。
 のっそのっそと地面を歩く姿にはその土地の主のような威厳があり、途中、灰色の人間に囲まれて襲われたりもしたが、何でもできる気分になっていたマノンの敵ではなかった。自分でも驚くほどのパワーを発揮し、マノンは灰色の人間たちをなぎ倒した。
顔に目、鼻、口のない灰色の人間は身長が2メートル以上あり、全身が毛むくじゃらだった。マノンは最後の一体の首を噛みちぎって顔を投げると、ふたたび炎の海に向かって歩いた。
 さっきの大木から大火災まで半分ぐらいのところまで来ると、何かが急接近してきた。いきなり緑色の旋風に吹き飛ばされ、変身が解けて人間の姿に戻ったマノンは、薄れゆく意識の中で誰かに口をふさがれた。



 意識を取り戻すと、オレは炎の海の中に沈んでいた。元の姿だ。
 原子爆弾とまではいかずとも、ダイナマイトでこの威力になるのか。火のエネルギーは好物だが、こんなネガティブなエネルギーは食えたもんじゃない。
霊体がそわそわする。消えかけのホログラムみたいに不安定なオレの体は、上の次元まで飛んで行っちまいそうな浮遊感を持っていた。
 辛い、息がしづらい。不快な振動数で体がふるえている。おそらく魂に傷が入っている。とっさに香りと念で防御できたから良かったが、もっと傷が深かったら即死だった。最悪転生ができなくなっていたかもしれない。

(魂に深い傷ができたり壊れたりすると、転生自体が難しくなってしまう。魂を破壊するエネルギーはいろいろあるが、代表的なものは核やマイナデスコール、深い怨念だな。死んでまで魂の治療に苦労したくないし、死ぬときは健康に死にたい)

 周りを見ると、サンタたちはいなくなっていた。オレの周りでは黒いドロドロした液状のものがいくつも這っている。もしやアレか? いや、そんなはずは……
 サンタたちはもともと、かなりマイナデスコールに侵されていた。霊として体が半分機能してない状態で、あんな大爆発に巻きこまれたら、モロにダメージを喰らう。
それにしても……おぞましい光景だ。あれは、おそらく生きてはいるだろうが、ちゃんと転生できるのか? あのまま死ぬこともできず生きながらえるのだとしたら、かなり酷だ。
 オレは考えるのをやめた。あの黒い液状のものに意思や思考があるとは思えない。かろうじて感情が残ってたとしても、あまり考えたくない。悲惨すぎる。
ただ、自分がああならなくてホッとする。

 ――三太は!?

 まさか三太もあのドロドロに!?
「三太ァ、生きてるか!」
 炎の中で呼びかけるが、返事はない。
 オレも虫の息だ、木の破片に腹を貫かれてる。このサンタ界の有り様を知っていながら、救援を呼ぶこともできないとは……。オレたちの負けだ、ここで何もかも終わっちまうんだ。
 かわいそうなのはマノンだ、オレと三太がここで死ねば、あいつはひとり。自力で人間界に帰っていくのは難しいだろう。さっきから姿が見えないが、心配だ。離れたところで様子をうかがっていたのは覚えてるが、爆発後はどうなったんだ? 無事だといいが……。
 オレは自分の選択に後悔した。勢いで三太を助けに行くべきではなかった。やつは秘密主義のサンタ、オレは合理主義の植物、花だからソリが合わない。三太にジャマされないスキに、マノンにスマホを渡してアロマ連合に連絡させるべきだった。

『天界の果実』の名において誓う――植物界のオレンジは、サンタ界の緊急事態の内容について、方法の如何を問わず他者にはいっさい口外しないと誓う

 かなりガチガチに結んじまったが、粗だってあるはずだ。三太が仲間と感動の再開をして取っ組み合ってるスキに、いろいろ試すべきだった。
オレは念のためもう一度、顔の前に画面を出してジジイに連絡しようとしたが、指に、力が入らない。押そうとしても、見えない壁があるみたいに指が進まない。
やはりオレでは、ディスプレイのエンターを押すこともできない。いや――

 もし三太が死ぬことで、礼名契約の効力がなくなるとしたら――

 三太がまだ生きてるなら、やつを見つけてトドメを刺し、契約を解約できれば……。この炎はキツい、いまの調子だと持ってあと数分がオレの限界だろう。それまでに三太を見つけられるか……?
オレは残りわずかな体力を振りしぼって、炎の中を走った。
いま一番マズいのは、この現状を誰にも伝えずにオレたちが死ぬことだ。なんとしてでも三太を殺さなければ。
くっ、頭が痛い、視界がかすんで霊視もできないし、なにより霊体がブレる。自分が動かそうと思ってない方向に手足が動いてしまうことに、マイナデスコールのヤバさを実感した。
 やみくもに走ってると、三太を発見した。三太は仰向けになって倒れていた。また子供の姿になっている。直撃を喰らったようだ。
「おい、三太」
 意識はないようだ。ひどい傷だ、皮膚は赤黒く焼けただれ、顔が顔の形をしていない。体が半分溶けている。三太を見つけて安心したせいか、オレはひざからガクリと崩れた。力が入らない。呼吸する度に体内にマイナデスコールが入ってきて、体を蝕んでいく。
 殺すチャンスなのに、動けない。いま三太をやらなければ、助けも呼べずにオレたちは死ぬ。三太を殺せば、救援が呼べる、それにラベンダーの部屋に入ったこともバレない。
 ちくしょう、オレだってできることなら三太を助けたいんだ。
結局オレたちはニンゲンの奴隷だ。
精霊として、大人ぶって好き勝手やってるニンゲン共を導く役割を持っちゃあいるが、どう生きるかなんてニンゲンの勝手だ。オレたちは強制できない。サンタ共だって、心の中では反ニンゲン派のやつなんてたくさんいるだろう。
 それなのに、欲しがるばかりで何も還元しないニンゲン共にせっせとプレゼントを作って渡さないといけないなんて……
 オレだったら、維管束が煮えくり返る想いだ。
 三太なんて見た目からしてマジメだから、きっと苦労が絶えないだろう。ニンゲンの奴隷としてあと何千年も働くぐらいなら、ここでいま死んだほうが幸せに違いない。
 ……いかん。手で額を押さえた。どうやらオレも、マイナデスコールのせいで変になってる。
 オレの体内ではエネルギーが動きを停止し、体の振動も止まろうとしていた。
 ここでオレは枯れるらしい、種も残さずに。
 あぁ、もっといっぱい女を抱きたかった。
 あの子もあの子もあの子も、まだ落としてない子がたくさんいたのになぁ。
 死ぬ間際に後悔すると、たいていロクなことにならない。オレは最期の力を使ってオレンジの香りを空間に響かせた。暖かくて、冷たい心を溶かすような甘い香りだ。不安が少しだけ薄らぐと、オレは目をつむる。
 奴隷仲間同士、仲良く行こうぜ、小さなサンタよ。
 頭に歌が聞こえた。メロディーが流れてくる。
どうやら、死後の次元がオレたちを迎え入れようと門を開けたらしい。

 ――その瞬間、脳裏にあの女の髪がひるがえった

 待ってくれ、最期にアイツを、あの香りを思い出させないでくれ、そんな、後悔しすぎて転生できなくなっちまう!
 
 冥府の門は開かれた
 湯を沸かせ、料理を運べよ彼の地へと
 針が12を指した時
 赤いザクロは地に落ちる
 行く年くる年四季折々

 ちがう、これは詠唱だ! 誰かが唱えてる!!

「『社交の草』の名において命ず――整えよ」

 緑色の風が颯爽と吹いて、新鮮な空気と霊気を運ぶと、大火事は消えて荒れた土地に命が芽吹いた。枯れ木は花を彩り始める。
 オレの体と三太の体に霊気が入り、良質なエネルギーが体内で循環を始めた。助かった、あと少しで宇宙に召されるとこだった!
 魔界みたいなこの世界も、人間界程度にはマシな光景になった。
「どうしたオレンジ? らしくないね。オレンジ伝説はもうおしまいかな?」
 この嫌味の効いた上流階級風の香りは、間違いない、やつだ!
「しばらく見ない間に、ずいぶんと力をつけたな」
「君はちょっと衰えたんじゃない? これでナイトなんでしょ? ぼくがアロマ連合のマスターになる日もそう遠くないね」
「おい、年上に向かって失礼だぞ!」
「ぼくのほうが年上だ」
「嘘つけ!」
「ぼくは大人だけど、君は子供じゃないか」
「姿の話だろ!」
 まったく、あいかわらず口が減らない……
頭に草冠を被ったモスグリーンの髪の男性は、高級なスーツで身を包んでいた。

「ペパー、どうしておまえがここにいるんだ?」